体調不良に悩む現代人
偏った食生活、運動不足、ストレスなど、現代人は「病気の素に囲まれて生活している」といっても過言ではありません。体調不良を訴える人が多く、疲れやだるさ、睡眠がうまくとれないなど、慢性的な不調を感じている人が多く見られます。
しかし、多忙な毎日に受診もままならず、気づいたときには、がんや高血圧、糖尿病、心臓病、脳梗塞などの病気を発症する結果になってしまっています。
近年特に増えている心筋梗塞や脳梗塞の場合、たとえ一命を取り留めても、半身麻痺などが残り、つらいリハビリをしなくてはなりません。場合によっては、介護が必要になることもあり、考えようによっては、がんよりも怖い病気と言えそうです。
また、本来自分の体を守るはずの抗体がかえって苦しめてしまうアレルギー疾患や、生きていく気力をなくし、ついには自殺という手段を選んでしまううつ病なども増えてきています。
これらは、社会問題化し、政府も様々な対策を講じてていますが、なかなか改善されないのが実情です。
糖尿病とがんの関係
いわゆる生活習慣病のなかでも、特に問題となっているのは糖尿病です。遺伝体質の糖尿病は別として、肥満から糖尿病になる人が増え続けています。
糖尿病は放置しておくと重大な病気を併発するだけでなく、急に血糖値が高くなった場合は、がんが疑われるという調査データも発表されています。
また、ガンで亡くなる人の一番多い合併症は糖尿病だともいわれています。いずれにしもて、糖尿病とがんは共通して生活習慣がこうした結果を招いているのかもしれません。
病気を知って早めの対策を
健康を取り戻すためには、まずは日常生活を見直すことから始めましょう。何より大切なのはバランスのとれた適度な量の食事と毎日の運動です。簡単そうでいて、なかなか実行できない人が多いようです。
そして、現代人がかかりやすい病気の原因と症状を知り、予防に努めることも欠かせません。最近では検査の技術や治療方法も進歩していますので、早期に発見して早めに治療し、大事に至らないうちに治してしまいましょう。
心の病
心の病の主なものはうつ病、躁うつ病、心身症、不安・強迫性障害、統合失調症、摂食障害など、その症状や経過はさまざまです。いずれも心と体のバランスが崩れ、社会生活が困難な状態になる病気で、カウンセリングや投薬で治療していきます。
中でもうつ病は増加の傾向にあり、企業内のメンタルヘルス対策の遅れなどが指摘され、社会問題化しています。初期症状では睡眠障害が多く、注意が必要です。
うつ病の症状が起こるのは脳内の伝達物質が関係していると考えられていますが、気分が沈み、わけもなく悲しくなったり、自信喪失、絶望感などを抱きます。最悪の場合、自殺に至ることがあり、十分気を付けなくてはいけない病気です。最近では自殺者の数は交通事故死者数の5倍以上に上ると言われています。自殺者の年齢別では50歳以上が全体の半数を占めており、男女比では圧倒的に男性が多く、同期のトップは健康問題となっています。
心の病の原因となる可能性が高い要素
- 器質的要素
- 過度なストレス
- 疲労
心の病の早期発見のために
うつ病のごく初期では「朝刊シンドローム」といって、朝起きた時に朝刊を読むのが億劫になることがあります。世の中の出来事に興味がなくなり、朝から憂鬱な気分になります。
不安感や焦燥感も伴い、怒りっぽくなり、不眠または過眠となり、集中力もなくなります。
こうした症状が出たらできるだけ早く受診しましょう。
年齢別自殺者数 原因・動機別自殺者数
年齢別自殺者数
原因・動機別自殺者数
心臓病
心臓病は、がん、脳卒中とともに、日本における3大死因の一つに数えられます。
近年狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患の急増は、先進工業国、文明国に多くみられる傾向です。欧米諸国では死因の1位を心臓病が占めている国も多く、日本でも遠からず同様になることが予想されます。
虚血性心疾患の4大危険因子としては、高コレステロール血症、喫煙、糖尿病があげられ、ほかに遺伝、肥満、痛風、ストレスなどとの関係も考えられます。
心臓は血液を全身へ送るポンプとしての機能をもち、心筋という丈夫な筋肉で構成されています。心筋が必要とする酸素や栄養素は、心臓を囲むように走る太い冠状動脈内の血液によって供給されますが、何らかの原因でその血液量が極端に減少したり、血流が途絶えたりすることがあります。これが狭心症で、激しい胸痛を引き起こします。
また、急に心筋の細胞が壊死すると、心筋梗塞となります。この心筋の壊死が広範囲に及んだ場合には、心臓の機能が著しく低下し、ついには死にいたることもすくなくありません。
心臓病の原因となる可能性が高い要素
- 高コレステロール血症
- 高血圧
- 喫煙
- 糖尿病
心臓病の早期発見のために
前触れなく突然起こるので、定期的に負荷心電図検査などを受けておくことが大切です。
なお発作の際、呼吸困難やショック症状などが目立ち、特有の胸痛に気づかないことがあるので注意してください。
脳卒中
脳卒中とは、頭蓋内出血、脳梗塞、一過性脳虚血、高血圧性脳症などの総称です。
頭蓋内出血には、脳血管が破れて出血する脳出血と、それが脳を覆うくも膜の下の下でおこるくも膜下出血とがあります。脳梗塞は、脳の動脈がつまって血液が流れなくなり、麻痺や昏睡が起こる病気で、成因により脳血栓と脳塞栓とに分けられます。一過性脳虚血は脳の血液循環が一時的に悪くなるもの、高血圧性脳症は高血圧のため脳内にむくみができ、頭痛や嘔吐、けいれんなどが起こる病気です。
脳梗塞は、食生活の欧米化などの影響により増加しています。脳卒中には死亡者減少もみられますが、これは救急医療技術が発達したもので、脳卒中が減少しているのではありません。
脳卒中は、一命をとりとめたとしても、半身の麻痺といった運動障害や、言語をはじめとする近く障害などの後遺症が残ることが、しばしばあります。
高齢化が続く日本にあっては、警戒すべき生活習慣病です。
脳卒中の原因となる可能性が高い要素
- 高血圧
- 肥満
- 心臓病
- 運動不足
- 動脈硬化
- 喫煙
- 糖尿病
- 加齢
- 高脂血症
脳卒中の早期発見のために
脳出血には前触れがなく、突然発作が起こります。
高血圧と密な関係があるので、日ごろから注意しましょう。脳梗塞は視力低下や言語障害、手足のしびれ、めまいなど一過性脳虚血の症状が前もって起こることがあるので、症状に気づいたらすぐ受診するようにします。
高血圧症
血圧の正常値には個人差がありますが、WHO(世界保健機関)の定めた基準により、安静にした状態で、何度計測しても収縮期血圧が160以上、拡張期血圧が95以上のときに、高血圧症と診断されます。
高血圧症の90%以上は原因不明の本態性高血圧症と呼ばれるもので、残りはほかの病気から生じる二次性高血圧症です。本態性纐纈賞は、高齢になるほど患者数の割合が高くなります。
高血圧を放置すると、いろいろな合併症が起こってきます。脳の合併症としては意識障害や運動障害、手足の麻痺などがあり、能祖中にもつながります。心臓では不整脈や心肥大、ついには心不全や、冠状動脈に動脈硬化が生じ、狭心症から心筋梗塞を引き起こすこともあります。
腎臓では、高い圧からくる緊張で腎血管が硬くなり、内腔も狭くなって血流が不足し、腎機能が低下する症状もみられ、萎縮腎から腎不全へ、さらに尿毒症へと進行します。
また、網膜動脈の狭窄や網膜出血など、目にも合併症は生じます。眼底の動脈が細くなったり、光に対する動脈がの反射が強まったりし、症状が進むと動脈が破れて出血します。
高血圧症の原因となる可能性が高い要素
- 遺伝
- 運動不足
- 加齢
- 精神的ストレス
- 塩分のとりすぎ
- 飲酒
- 寒さ
- 喫煙
- 肥満
高血圧症の早期発見のために
本態性高血圧症は、初期には特別な症状がないのがふつうです。
35歳を過ぎたら、健康診断などで年に1~2回は定期的に血圧を調べましょう。最近は、自分で簡単に測定できる血圧計も市販されているので、利用するのもよい方法です。
糖尿病
糖尿病とは、体内の糖代謝にかかわるインスリンというホルモンが不足したり、うまく作用しなかったりして、血液中のブドウ糖(血統)が効率よく利用されなくなり、濃度が上昇して、からだのあちこちに障害をきたす病気で、さまざまな合併症を起こす可能性が高く、重症化する例もあります。
たとえば、糖尿病患者は一般の人よりも心筋梗塞なら4倍、脳梗塞なら2倍も発病しやすいといわれ、人工透析を受けている患者にも、糖尿病の合併症から腎臓疾患を起こした例が多く見られます。また、糖尿病網膜症は視覚障害の原因第一位であるとともに、中途失明の原因としても糖尿病による合併症は第一位になっています。
糖尿病は根治が難しく、いったん発病したら長期間にわたって治療を続けなければならないことで知られています。しかし、医師の指導による正しい食生活、運動、投与といった対応で合併症の発病を予防すれば、日常生活に支障は生じません。
糖尿病の原因となる可能性が高い要素
- 遺伝
- 過食
- 運動不足
- ウイルス感染
- 自己免疫
- 膵臓・内分泌疾患
糖尿病の早期発見のために
はじめのうちは目立った症状がなく、やや進行してから、多尿・頻尿、口渇、多飲、体重減少、全身の倦怠感などがあらわれてきます。
症状が出る前に発見するためには、健康診断などで、血糖検査や尿検査を定期的に受けておくことが大切です。
脂質性異常症
もとは高脂血症とよばれていましたが、血液中の脂質であるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)、トリグリセライド(中性脂肪)が過剰な状態だけでなく、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が不足している状態も含めて、この名称となりました。
血液中の総コレステロール値が220mg/dlを超える高コレステロール血症がよく知られていますが、最近では高LDLコレステロール血症、艇HDLコレステロール血症、内臓脂肪型の肥満に多く見られる高トリグリセライド血症が注目されています。
これらは高コレステロール血症より、さらに動脈硬化との関係が深いと考えられ、心筋梗塞や脳卒中にもつながります。
血液中の資質は本来、常に一定の量に保たれています。脂質異常は、脂肪の多い食事、運動不足といった生活習慣が原因となるので、毎日の生活に食事療法や適度な運動などを取り入れて体脂肪率を下げ、血液中の資質をコントロールして予防できます。
脂質性異常症の原因となる可能性が高い要素
- 遺伝
- 運動不足
- 肥満
- 過食
脂質性異常症の早期発見のために
自覚症状はほとんどありませんが、遺伝的な高コレステロール血症では、黄色腫とよばれるかたまりが目のふちなどにできることがあります。
簡単な検査で血液中の資質の状態を把握できますので、定期的に検診を受けるようにしましょう。
慢性腎不全
慢性腎不全とは、なんらかの病気の影響で腎機能が著しく低下した状態です。原因は慢性糸球体腎炎がもっとも多く、半数以上を占めています。
腎臓の子宮体は、原尿をろ過して尿をつくり、体内でたんぱく代謝によって生じた尿素や尿酸、クレアチニンなどの不要物を尿の中に排出します。慢性腎不全ではこの機能がうまく働かなくなり、不要物が血液中に残って異常に増加します。
また、腎臓がホルモンをつくる機能などにも異常をきたし、いろいろな障害があらわれます。
腎臓には機能不全に対する予備力があるため、慢性腎不全が進行し、機能が50%くらいまで低下したところで、はじめて軽い貧血、夜間の多尿といった症状に気がつきます。
さらに20%ぐらいまで機能が低下すると、目の周囲や下肢にできるむくみ、全身倦怠感、疲れやすさ、食欲不振、吐き気、皮膚のかゆみ、口臭(アンモニア臭)などの全身症状があらわれます。
腎機能は低下すると、その多くは元にもどりません。今のところ根治療法はなく、食事や薬物療法によって進行を防ぎます。重症の場合は、人工透析法を用います。
慢性腎不全の原因となる可能性が高い要素
- 脱水、ショック症状
- 低血圧、高血圧
- 感染症
- 高リン血症
- 糖尿病、膠原病
- 尿路閉塞、尿路感染症
- 腎毒性薬剤
慢性腎不全の早期発見のために
夜間の多尿など比較的初期の症状に注意するとともに、定期的に検査を受け、血液中の尿酸やクレアチニン、尿中のクレアチニンなどの値を定期的に調べておくことが大切です。
骨粗鬆症
骨は、常に古いものから溶かして吸収され新しく形成されることによって強さを保っています。このバランスが崩れ、形成が吸収においつかなくなると、骨密度が低下して骨の内部がスカスカの状態になります。
これが骨粗鬆症です。女性や高齢者に多い病気で、特に閉経後の女性は骨の吸収を抑える働きをもつエストロゲンという女性ホルモンが減少するため、骨粗鬆症にかかりやすくなります。
また、脳や心臓を正常に機能させるためには、血液中に一定量のカルシウムが必要です。そのため、食事などから必要量のカルシウムが得られないときなどには、骨のカルシウムが血液中に流出して補給されます。そうした状態が続くと、骨密度は低くなっていきます。
骨粗鬆症になると、骨が非常にもろくなるため、軽い転倒でも骨折することが少なくありません。足の骨折から歩行困難、ひいては寝たきりの状態になる例も見られます。
直接生命に関わる病気ではないからと放置せずに、快適な生活を送るためには避けなければならない怖い病気と考えて、予防に努めましょう。
骨粗鬆症の原因となる可能性が高い要素
- ダイエットによるカルシウム不足
- 女性ホルモンの減少
- 運動不足
- 加齢
- 糖尿病、関節リウマチなどの病気
- 飲酒
- 喫煙
骨粗鬆症の早期発見のために
自覚症状に乏しく、姿勢がわるくなったり身長が縮んだりしたことに気づくころには、かなり進行し、圧迫骨折していることも多くあります。
定期的に医療機関などで検査を受け、骨密度をチェックしましょう。背中や腰の痛みも要注意です。
アレルギー性疾患
日本では、全人口の約3割がなんらかのアレルギー疾患者にあたるといわれています。なかでもアトピー性皮膚炎や花粉症、気管支ぜんそくなどは患者数も多く、広く一般的にしられています。
アレルギー性疾患は、本来、からだへ侵入しようとする異物を排除する働きであるはずの免疫反応が、過剰となることで起こります。この異物を抗原、とくに外部からの刺激となるものをアレルゲンと呼びます。
これらを免疫反応によって排除すために産出される物質が抗体ですが、この抗体アレルギー性疾患の不快な症状をもたらしてしまうわけです。
花粉症は、体質・環境的な要因に花粉が刺激となって生じ、日本では春先のスギ花粉によるものが大半を占めています。
気管支ぜんそくは、一部を除く大半がアレルギー性疾患と考えられています。機関や気管支が急につまって、発作的に息苦しくなり、呼吸のたびに、ゼーゼー、ヒューヒューという音が聞こえるようになります。
アレルギー性疾患の原因となる可能性が高い要素(住環境に関して)
- 断熱化、気密化
- 絨毯の多用
- ペット
- 室内家具の増加
- 掃除の困難性
アレルギー性疾患の早期発見のために
よく似た症状の病気があるので、発病の際に誤った判断をしないよう、専門医に相談することが大切です。
また、家族にアレルギー性疾患が見られる場合は、より注意が必要となります。